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月明かりに照らし出される江戸城。 時の幕府将軍である公方自らが座して、その者が現れるのを待っていた。 静寂の中、脇にあるロウソクの炎が揺らめく。 公方の視線が揺らめく炎へ移る。 再び前を向くと、畳の中央には白い扇子が立てられていた。 立った扇子を凝視する公方の視線から、さらに後ろで平伏する影がある。 「半蔵か、おまえにしては酔狂なことをするではないか」 おもわず公方の口から声が漏れる。 問い掛ける公方の声に影も反応する。 忍頭巾から鋭い視線が覗き、 「服部半蔵、御直御用の命有りと聞き、只今参上仕りました」 公方が任を伝えると、音もなく外の闇へと消えていく。 半蔵の消えた闇を見すえながら公方がつぶやく。 「あやつめ・・・。 歳をくうても昔のままの気迫・・・ 忍びとは斯く有るべきか」 半蔵の消えゆく闇は大海にある出島へと続く。 |
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ちょび助:おやびぃ〜ん、待ってくだせぇ〜 臥龍:オゥ、チンタラすんじゃね〜や。ちょび、オゥ ちょび助:そ、そんなぁ〜はやすぎるんでさぁ、おやびんがぁ 臥龍:オゥ、そんなことよりこんな牢屋とはよ……さっさとオサラバしようぜ、オゥ ちょび助:へいっ、がってんでさぁ〜 臥龍:んっ?! ちょっと待てや、ちょび ちょび助:なんでやす、おやびん 臥龍:……オゥ!! ちょび助:へいっ!! 臥龍:お前じゃねぇ〜や、ちょびこう ちょび助:へっ? 臥龍:オゥッ! そこの闇でコソコソ隠れてるネズミヤロウ!! 出てこいや、オゥ 半蔵:黙ってやり過ごせば、死なずにすんだものを 臥龍:何だと、オゥ。この山賊中の山賊……つむじ風の臥龍に向かってやり過ごせだと、オゥ!! ちょび助:おやびん、カックイーッ! カックイッスよ!! 臥龍:オゥ、ちょび助。隠れてな ちょび助:ヘイッ、もう隠れてやす 半蔵:お主に恨みはないが、姿を見られては仕方がない。闇に滅せよ 臥龍:オゥ、しゃらくせい。やってやらあ、オゥ |
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伊賀忍軍:待てっ!! そこの男。 覇王丸:待てとはオレの事かい? 伊賀忍軍:昨夜あの森で我らが話、盗み聞きしていたな。 覇王丸:おいおい、人聞きの悪い事いうんじゃね〜ぜ。 オレはただ星を見ていた。 イイ星空だったんでね。 伊賀忍軍:フン!! 問答無用! 半蔵:待て!! 伊賀忍軍:おっ御屋形さまっ! 半蔵:お前達が何人かかろうとも勝てる相手ではない。 下がれっ!! 伊賀忍軍:しかし・・・・・。 半蔵:下がれと言うたのだぞ。 伊賀忍軍:ハッ、ハハッ! 覇王丸:・・・・・。 久しぶりだな、半蔵。 半蔵:お久しゅうござる。覇王丸殿。 部下の無礼、お許しくだされ。 覇王丸:影となり、闇に生きる忍の道。仕方のない事だ。 半蔵:かたじけない。 覇王丸:だが、なぜこんな所に伊賀者がいる? 半蔵:・・・・・。 覇王丸:三刃衆!! まさか幕府が動いたのか?! 半蔵:主君に仇なす者あれば、そこに影あり。 覇王丸:そうか、とうとう幕府が動いたか。 半蔵、すまねえがオレに時間をくれねえか? 半蔵:時間? 覇王丸:三刃衆の件、オレに預けてはくれねえか。 半蔵:・・・・・。 覇王丸:オレの刀に掛けて、何とかする。 半蔵:覇王丸殿。 それはできぬ相談です。 覇王丸:・・・・・おめえ、もしかして? 半蔵:覇王丸殿!! 影は生まれし時より影。 我ら影は、己が過去をも切り捨てねばならぬ宿命。 覇王丸:そうか・・・。 我が手で救った命、できれば斬りたくねえ。 どうしても抜くのか? 半蔵:はい。 |
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朧:来たかよ、半蔵 半蔵:お前が三刃衆の頭、朧だな 朧:フォフォフォ、知らぬような顔をするなや、半蔵 半蔵:我が主の命により、三刃衆を殲滅する。覚悟せよ 朧:あくまでも知らぬふりかよ、半蔵。それとも、覚えておらぬと言うのか? 半蔵:………… 朧:数十年前のあの時より一族を追われ、うぬを血祭りにあげることのみを糧に今日まで生き抜いてきたのじゃ。 クカッカッカッ、オゥオゥ大師殿も喜んでおるわい 半蔵:大師? やはり慈限大師殿が生きておられたか 朧:そうよ。うぬらの汚した世の中を滅ぼし、新しい世を誕生させるため、あのお方は永遠の生を得たのじゃ。 半蔵:永遠の生? 朧:カッカッカッ。その秘密知らぬまま、死ねや半蔵! 半蔵:おやじ殿も、罪なことをしてくれる 朧:何をブツブツ言うておる。我が全霊を賭けてちぎり殺してくれるわっ!! 半蔵:我が名は服部半蔵。影の名においてお前を殲滅する。 |
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半蔵:主君に仇なす者、それがたとえ業魔の者であっても、我らが影、これを殲滅する。 朧よ、我が名にどのような怨みを抱いていたかは、今となっては知る由も無いが・・・道を誤ったと知れ。 伊賀忍者:御屋形様!! 半蔵:慈限大師殿のお姿、見つかったか? 伊賀忍者:はっ!! この城の地下深くの石室にて、御姿を確認してございます。 しかしながら・・・ 大師様、即身仏となりて朽ち果てておられました。 半蔵:即身仏だと?・・・ 永遠の生とはこの事か。 承知した。 皆の者、大師殿の亡骸(なきがら)に柩をもて。 これより江戸に帰還し、速やかに埋葬せねばならぬゆえ。 伊賀忍者:御意。 半蔵:幕府創成に関わりのある御坊が、主君に仇なす根源などと世に知られる訳にはゆかぬ。 伊賀忍者:御屋形様、実はもう一つ奇妙な事が。 半蔵:妙? 伊賀忍者:はっ、それが大師様のお顔が・・・朽ちてなお妖しげに笑みを浮かべておられるような・・・。 半蔵:面妖な・・・恐るべきは慈限大師・・・。 それほどまでに国家転覆を祈願なされておったとは。 そのような亡骸など、主君にお見せする訳にはゆかぬ・・・。 老中:と、殿!! 一大事でございます。 殿:・・・・・何事じゃ? 老中:庭に奇怪なる物が!! 殿:奇怪な物? 老中:折れた三振りの刀と共に、柩のような物が・・・。 殿:何!!柩じゃと・・・。 張り紙:『御直御用の令、完了仕り候 天下に仇なす三振りの刀全て折れ砕け候 かくて、天人僧が亡骸納めし柩これにて候 影』 殿:『影』?・・・。 半蔵ではないか! 早くその柩を開けい!! 老中:たっ、ただ今!! 殿:何っ・・・? 何だこれは・・・。 何故、大師は背を向けておるのだ? 老中:なんとも面妖な・・・ 殿!! 背中に何か書き添えられておりますれば・・・。 殿:何々・・・ 張り紙:『大師殿、臨終の際主君に仇なした事を恥じ 主君に顔向け出来ぬとの御遺言 屍は何も語りませぬゆえ速やかに密葬されたし』 殿:・・・・・くっ・・・くくくくはははは 半蔵めが、何と言う奴じゃ。 何はともかく、鎮護国家は成った。 天晴れじゃ・・・。 半蔵:皆の者、本当に良くやった。 公方様もさぞ喜んでおられる事だろう。 ご苦労であった。 伊賀忍者:御屋形様!! 半蔵:どうした? 伊賀忍者:我ら影一同、 御屋形様と共に!! 半蔵:オヌシたち・・・。 その言葉、この半蔵オヌシたちに義を以て代えさせてもらうぞ。 伊賀忍者:はっ!! 謎の男:真に影なるは、人知れず寄り添い守る者なり。 真に影なるは、人知れず忍び生きる者なり。 真に影なるは、人知れず老い朽ちる者なり。 我もまた、忍ぶ道を歩んだ者なり。 せがれよ、おまえの名は、服部半蔵。 真に影を統べる者なり。 ・・・よくやった。 |
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刀銘:忍者刀 影若【カゲワカ】 作:伊賀の刀匠 作日:不特定 刀剣の分類:直刀に近い彎刀 日本刀の分類:忍び太刀 刀身:二尺二寸 造りこみ:鎬造 説明:一般的に忍び太刀というのは一戦ごとに使い捨てられるのが常であるが、半蔵は先代が最後に持ち帰った忍び太刀を、領内の刀匠に特別に細工させた者を使用している。 使い勝手重視で作られた折れにくい忍者刀であるが、造りが荒く刃こぼれが激しいという点があるのも事実。そこをさらに丹念に打ち直して誕生したのがこの刀である。伊賀最強を謳う半蔵に恥じない太刀である。 |
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半蔵:・・・・・ この金鉱の何処かに城へと続く抜け道があるはず。何処だ? 眠兎:ネェネェ、オッサン何してんの? 半蔵:ナッ、何者だ!! 眠兎:あつくねーの、そんなの着てて? 半蔵:服部 半蔵、一生の不覚! この様な子供に背後を取られるとは!! 眠兎:くけけけけっ。オッサンうちひしがれてんのね。 半蔵:キサマ、三刃衆の手の者か? 眠兎:んとね、夕方の雨って海の臭いがするのね。何で? 半蔵:何故?と聞かれても拙者には判りかねるが・・・。 眠兎:ぜってーするよなっ、海の臭いってば。 半蔵:そっ、そうでござるな・・。 眠兎:ケッ!!そういう煮え切らない態度がこの国をダメにしていくんだよ、分かる? 半蔵:た、確かにかたじけないでござる。 眠兎:あんね、ミントってばランポーといつか海の向こうのリューキューに行くの。 いっぺ〜ぇキラキラした魚がいるらしいぜっ!! オジイがいっとったの。 半蔵:もしやそれは琉球王国の事でござるか? 眠兎:おう、リューキューだぜ! だから、お金ちょーだい。 半蔵:金でござるか・・・ってキサマ!追い剥ぎかっ!! 眠兎:おう。 半蔵:子供のくせになんていう事を!!許さぬぞ!! 眠兎:オッサンってば変なカッコしてケチンボだよな。 半蔵:変なカッコって・・・。 ゆ・る・さ・ん!! |