男には友がおりました。
浪人の姿をした男でありました。
余り己を見せることのない男でした。
ただ、暗い鳶色の目が時に、
鋭い光を宿すことがありました。
遠い男だと、男は思いました。
確かにそこにいるというのに、どこか、
遠い男でありました。
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