焦がれるは猛鷹の眼、孤狼の眼


 それは、島原の地。天草が一度目の生を終えた地。全ての終わりの地であり、始まりの地。
 覇王丸は、天草が待つその地に、来た。
「待っていたぞ、覇王丸」
 覇王丸前にし、天草は笑った。
 覇王丸の猛鷹の如く荒々しく、孤狼の如く鋭き両眼は、以前よりも輝きを増し、そこに宿る意志は強い。
 天草が、望んだ通りに。
「覇王丸よ、今度こそ誓うがよい、我への生涯の服従を!
 汝の魂は暗黒の快感に酔うだろう!」
「はっ、そうはいくか。
 あの時の俺とは、違うぜ」
 八双に剣を構えて覇王丸は口の端をぐいと上げた。
「俺を見逃したこと、たっぷり後悔させてやるぜ、天草!」
「期待しているぞ、覇王丸。
 さぁ、来い! 我が麗しき暗黒の淵へ!」
 天草は、宝珠を天へと掲げた。煌めく闇が天へと放たれる。
 最後の死闘の幕開けを、告げるが為に。
 それは、天草が焦がれる覇王丸の魂と共に在ることのできる刻の始まりであった。

                  終幕

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