静寂に在りし焔


 半蔵は左の肩に、重みと、それが伝えるぬくもりを感じた。
 目を向けた先では、黒い大きな瞳の娘が、何も言わず、膝を抱え、火をそこに映している。
 黒の中で、静かにほのおは燃えている。
 目を、火に戻す。
 左肩から伝わる感覚が、懐かしい。
――懐かしい、だと。
 ぱちと火がはぜる。
――否。
 目を、閉じる。
 視覚を閉ざしたことで、よりはっきりと重みとぬくもりとを感じる。
 それは、決して不快ではない。むしろ、心地よい。
――……だが……

 半蔵は幽かに、口の端を歪めた。

 苦く、自嘲するように。
 どこか、寂しげに。
 そして目を閉じたまま、森の威に身をゆだねた。
                               終

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