ガルフォード <青きイナズマ忍者>


公式ストーリー

 (メストムック収録バージョン)

 ガルフォードは幼いころに父を亡くし、女系家族の中で育ったせいか、細かいことにこだわったり、くだらない噂話や中傷をするのが大嫌いだった。いつも船着き場に行っては、いろんな国を回る船乗りたちの冒険談を聞いたり、その国の様子を聞くのが好きな子供だった。その中でも一番好きだったのが、黄金の国と呼ばれるジパングのニンジャの話で、彼はいつも、ニンジャになることを夢見ていた。この時代、それは途方もないことだったが、夢多き少年の心の中では計画が着々と進行中だった。
 月がやたら大きく見える晩だった。家族が皆寝静まっているころ、彼は自室の窓から家をでた。母や姉妹たちに何も言わずに出て行ってしまうことに良心が痛んだ。だが、「数年度立派になって帰ってくることでこの際は良しとしよう」と自分に言い聞かせ、明日の朝出発する日本行きのオランダ船に密航することにした。船乗りたちはまだ酒場で飲んでいる。この隙に船に乗り込んでしまおう、というスバラシイ計画である。そのとき、ガルフォードの足元で大きな影が動いた。月明かりが映しだしたその姿は、おなかの大きな犬だった。今にも子犬が生まれそうな雰囲気であったし、母犬も随分と弱っている様子であったので、ガルフォードはその場を動けなくなってしまった。
「参ったなぁ。このまま放ってはおけないし。ええい、いいや。ジパングにはいつでも行けるしな!」
 本音を言えばすぐにでも船に潜り込みたかったが、ガルフォードの良心がそれを許さなかった。仕方がないので家出の荷物の中から、柔らかいタオルやシャツを取り出して、母犬に敷いてやった。そしてまもなく子犬が生まれ出て、ガルフォードの表情は喜びに満ち、すぐに険しく変わった。生まれた子犬のうち一匹を除いて全て死産だったのである。
「チキショウ!なんてこった」
 涙ぐむガルフォードの前で母犬までもが息を引き取った。よく見ると母犬の体には数カ所打撲の跡がある。ガルフォードは生き残った子犬を優しく抱き上げた。
「コイツは俺が立派に育ててやるぜ。いじめられても、負けないぐらい立派にな」
 その後、幼いパピーを連れて日本へと渡る訳だが、母犬に誓ったようにパピーは立派な忍犬に育つことになる。
 これは持ち前の正義感だけで、天草を討とうとする数年前の出来事である。




 (ALLABOUT収録バージョン)
<夢多き少年の心>

 ガルフォードは幼い頃に父を亡くし(※1)、女系家族の中で育った(※2)せいか、細かい事にこだわったり、くだらない噂話や中傷をするのが嫌いだった。(※3)そのため、あまり友達とも遊ばずにいつも船着き場に行っては、いろんな国を回る船乗りたちの冒険談やその国の様子を聞くのが好きな子供だった。その中でも一番心惹かれたのが、黄金の国と呼ばれるジパングにいるニンジャの話で、この話を聞いてからはいつもニンジャになることを夢見ていた。(※4)この時代、それは途方もない事だったが、夢多き少年の心の中では計画が着々と進行中であった。

 月がやたら大きく見える晩だった。彼は家族が寝静まるのを待って自室の窓から家を出た。母や姉妹たちに何も言わずに出て行ってしまうことに良心が痛んだが、「数年度、立派になって帰ってくることでこの際は良しとしよう!(※5)」と自分に言い聞かせ、明日の朝出航するジパング行きのオランダ船に密航するために一路港へと向かっていた。この時間、船乗りたちはまだ酒場で飲んでいるはずである。この隙に船に乗り込んでしまおう、というスバラシイ計画である。(※6)

 港の近くまでに来たときにガルフォードの足元で大きな影が動いた。月明かりが映し出したその姿は、おなかの大きな雌犬だった。見ると随分と衰弱しており、今にも子犬が生まれそうな雰囲気だったので、ガルフォードはその場を動けなくなってしまった。
「参ったなぁ。このまま放ってはおけないし。ええい、いいや。ジパングにはいつでも行けるしな!」
 本音を言えばすぐにでも船に潜り込みたかったが、ガルフォードの良心がそれを許さなかった。(※7)家出の荷物の中から、柔らかいタオルやシャツを取り出して母犬に敷いてやった。そしてまもなく子犬が生まれだし、ガルフォードの表情は喜びに満ちたがすぐに険しく変わった。生まれた子犬のうち一匹を除いて全て死産だったのである。(※8)

「チキショウ!なんてこった!!」
 涙ぐむガルフォードの前で母犬までもが息を引き取った。よく見ると母犬の体には数カ所打撲の跡があった。ガルフォードは母犬と死産した子供に墓を作ってやり、生き残った子犬を優しく抱き上げた。(※9)
「コイツは俺が立派に育ててやるぜ。いじめられても、負けないぐらい立派にな!」
 その後、幼いパピーを連れてジパングへと渡る訳だが(※10)、母犬に誓ったようにパピーは立派な忍犬に育つことになる。(※11)

 これは持ち前の正義感だけで、天草を討とうとする数年前の出来事である。

(※1)ガルフォードの父はサンフランシスコきっての名保安官だった。ただ、かなり融通の効かない正義漢だったらしい。ガルフォードの正義感あふれる性格は父親譲りのものであるといえる。
(※2)母マリア、二人の姉ルージェとシェーラ、妹セレナとの間に挟まれて育ったせいか、女性には弱いようである。ガルフォード曰く「ヒーローはヒロインに弱いもの」。
(※3)ことこの事に関しては、たとえ大人であっても勝負(喧嘩ではない)を挑み、相手が否を認めるまでやめなかったという。
(※4)「猿飛佐助」や「霧隠才蔵」などの名前も出たが、特に多かったのは「服部半蔵」の名前だった。これにより「服部半蔵」はガルフォードの目標であった。
(※5)たしかに立派になって帰ってきたが、まさか家族も「日本人かぶれのニンジャおたく」になって帰ってくるとは思ってもみなかったであろう。
(※6)実はこの計画を母マリアは知っていたのである。彼女はガルフォードの性格を見抜き、黙って見送ったのである。
(※7)この事があって、第一回目の密航には失敗するのだが、二回目にはパピーとともに密航を成功させる。
(※8)この時ほど自分自身の無力さを感じたことは無いという。幼いながらもヒーローとしての資質は備えていたようである。
(※9)これがパピーとの衝撃的な出会いである。ちなみにパピーはシベリアンハスキーとボルゾイのハーフ、やはり……雌であった。
(※10)日本に着いたガルフォードは、甲賀くの一だったという女性と出会い、忍術を教わる。またしても女性である。どうやら、ガルフォードは女性と縁があるようだ。
(※11)まさか、母犬も忍犬に育てられるとは思ってもいなかったであろうが……。


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