王虎 <大陸の鬼武将>


公式ストーリー

 (王虎はメストムックとALLABOUTとで違いはほぼ皆無でした)
<必ずや新しい王朝を築こうぞ>

 さる王家の末裔であることが、彼の誇りであった。いつかは正当なる王家の末裔が中国を統一しなければならないと、そしてそれは、自分のほかいないと信じていた。故に、王虎は常に天下統一の策を練り、実行の時期を見計らっていた。王家の証しは誰にも見つからないように肌身はなさず隠している。万一にも王家の末裔であることが、有力な者を蹴落とそうとする皇帝の側近どもに知れれば、たちまち尾鰭の付いた讒言と共に報告されてしまう。そうなれば王虎の首は文字通り真っ二つとなるだろう。
 知略と武術にたけた武将は、奸臣たちにとって目のうえのたんこぶも同然で、王虎は、その功績にまつわる多くの武勇伝を持っていた。例えば、17歳のときに虎を丸呑みにした、であるとか、龍を従え天に昇っただとかの数々の逸話が高名な詩人によって謳われている。また、王虎は民衆にも人気が高く、政治家としても優秀だった。そのような事もあってか、王虎は奸臣たちの反感を買っていた。
 王虎も人を蹴落とすことしか考えてない者たちを好みはしなかった。王家の末裔であるという、誇りと自尊心がそれを激しく嫌った。しかし王虎が中国統一するために有力な人材が欠けており、文武両道に秀でた人物を部下にと、いつも望んでいた。だが王虎の目にかなう人物を見つけるなど、容易なことではなかった。
「三国史時代には多くいた漢はもう残ってはいないのか」それが王虎の最近の口癖であり、彼の忠実な部下もそれを聞いては心を痛めていた。
「清には本物の漢はおらぬ。ワシは異国に漢を探しに行くぞ」
 以前から考えていたことを、初めて王虎は口にした。王虎の側近の者は突然の事に言葉を忘れ、屋根に降る雨の音だけが辺りに響いた。外は夜のように暗く風も冷たい。
「王虎さま、申し訳ございません。我らが不甲斐ないばかりに……」
「よい、そなたらは自分の仕事の範囲では十二分に優秀よ。だが、それ以上の者がワシは欲しい。それを探しに行こうというのだ。皆の者、留守を頼んだぞ」
 そう言うと、夜明けを待たずに王虎は領地を出発した。雨は小降りに変わっている。
「生きて漢を連れて戻って来る日を待っておれ。そして必ずや新しい王朝を築こうぞ」
 王虎の側近は涙を流しながら主人の後ろ姿を見送るのであった。


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