チャムチャム



公式ストーリー

<不思議なバナナン>
「タム兄ちゃン、バナナン、バナナン探すの。ボク、バナナン食べるンだ」
 息せききって走って来たチャムチャムは、兄タムタムに飛びついた。
「?」
 タムタムは笑いながら首を傾げた。
 パレンケストーンに護られたグリーンヘルでは人々が平穏な日々を送っている。
 勇者タムタムはパレンケストーン探索の後、戦いの仮面を脱ぎ、グリーンヘルの護り人となって過ごしている。
「あのねあのね、むこうの湖にね、デンキウナギがいて、フラミンゴが言ッてたの」
「ちゃむちゃむ、落チ着イテ喋ル」
「フラミンゴが言ッてたの!」

 デンキウナギの味が忘れられないチャムチャムは、村の外れの湖に漁に出掛けた。お日様が顔を出し始めてから、頭の真上に来るまでデンキウナギを捜し続けたが、結局何も捕まえる事ができなかった。くたびれたチャムチャムが水辺で遊んでいた時、フラミンゴの噂話が聞こえてきたのである。
《ねえねえ、ご存じ? ハレハレ山(※1)の山頂には、何でも願いの叶う不思議なたからものがあるんですって》
《ええ、知っているわ。何でも願いの叶う不思議なバナナンでしょ》
《そう、ハレハレ山はとても危険で、あたしたち鳥でもたどり着くのが困難なのよ》
《でも、一度見てみたいわ。不思議なバナナン》
《そうね。見てみたいわね》
 グリーンヘルの村の人間の大半、特に子供達は動物の会話を聞くことができた。
 話の一部始終を聞き終えたタムタムは、ハレハレ山はとても危険だから、行ってはいけないとチャムチャムに言った。
 ハレハレ山は「聖なる魔が住まう山」とも言われ、足を踏み入れるものはいない。
「えーッ。ボク、バナナン欲しいよ。バナナン見つけるンだ。タム兄ちゃンがダメッて言ッてもボク行くンだからね」
 一度言い出したら聞かない妹の性格をよく知っているタムタムは、大きな溜め息をつき、仕方がないので一緒に「不思議なバナナン」を見つけるため、ハレハレ山へと向かった。

 ハレハレ山は常に濃い霧に包まれ、視界は非常に悪く気温も低い。道らしい道は何も無く、熱帯の植物があったかと思うと、いきなり針葉樹の林が広がる。
「ハレハレ山ッて、おもしろいね。タム兄ちゃン」
 脆い岩場をよじ登っていると、不意に、大きな鳥がチャムチャム一行の前をよぎった。翼に爪の生えた大きな鳥はグリーンヘルでは見ることができない。
「あのね、ボクからタンジルストーン(※2)を取ッてッた鳥も、あんな鳥だッたよ。でも、あの鳥は悪い鳥じゃないね」
 ハレハレ山は不思議な山だった。爪のある大きな鳥に加え、大きなとかげ、毛むくじゃらの象など、普段見ることのない動物をたくさん見かけた。(※3)
 谷に落ちそうになったり、何度か動物に襲われそうになったりもしたが、機敏に回避しようやく霧の晴れた頂上に着くことができた。
「バナナン、バナナンは!?」
 辺りを見回すが、バナナの樹など見当たらない。だが、微かにバナナの匂いはする。タムタムは小さい妹の肩を叩き、岩場の蔭に隠れている一本のバナナの樹を指さした。
「バナナンだッ」
 そこは黄金に光り輝くバナナンのなるバナナの樹が一本あった。甘い、甘い、バナナの香りがいっぱいに広がる。
「ちゃむちゃむ、何デモ願イノ叶ウ不思議ナばななん。何ヲ望ム?」
 タムタムは高い背を屈め、チャムチャムの顔をのぞき込んだ。
 チャムチャムは少し宙を見て、大きな声で叫んだ。
「おいしいバナナが食べたい!」
 かくして、チャムチャムは冒険の末、不思議なバナナンを見つけだし、念願のおいしいバナナを食することができた。
 数日後、チャムチャムは素朴な疑問が浮かんだ。不思議なバナナンはどんな味がするンだろう、と。

(※1)より正確に日本語のカタカナ表記をすると「ハゥレハゥレ山」となる。
(※2)より正確に日本語のカタカナ表記をすると「ゥトァワレンディェル」となる。パレンケ(ゥピャレンクェ)ストーンと同じく、「ゥトァワ」にアクセントを持つと「気高い」や「聖なる」の意となるが、真ん中「レン」にアクセントがくると「破壊」「破滅」といった逆説的な意味となる。
(※3)ハレハレ山には始祖鳥やディノニクス、マンモスなど今現在では絶滅生き物がたくさんおり、年代もバラバラである。



プロローグ

 子分のチンパンジー、パクパクと漁に熱中していたところ、家宝のタンジルストーンを魔物に奪われてしまう。親にナイショで持ち歩いていたし、捕られてしまったことがバレたらきっと怒られると考えたチャムチャムは、パクパクと一緒にこっそりとタンジルストーンを探す旅に出た。
 その数日後、彼女の家族たちは大騒ぎすることになる。


プロローグ2

 普段、滅多に捕れないデンキウナギを見つけてチャムチャムは漁に熱中していた。
「こいつを捕まえて、タムタムと一緒に食べるンだ。がンばってよ、パクパク!」
 子分のチンパンジーに声を掛けたとき、何かがチャムチャムの首元を掠め、ぶら下がっていた「タンジルストーン」を奪い取った。
「アアッ! こらー、かえせー!」
 咄嗟に飛びかかったが、鳥の姿をした魔物はヒラリと身を翻して何処へかと去って行った。
 タンジルストーンとはチャムチャムの家に代々伝わる家宝であり、普段はその石から放出されるエネルギーを封じる結界の中に保管されている。だが、チャムチャムはタンジルストーンがとても気に入っており、しばしば親の目を盗んで持って出ては遊んでいた。
「どうしよう、おとうさンに叱られるよー。そうだ! おじいちゃンに相談しよっと」
 彼女の祖父は村の捜し物の名人で、タンジルストーンのある方角をチャムチャムに告げた。
「わかった。ちょっと探しにいってくるねー」
 ちょっと、と言ったきりチャムチャムはその日帰ってこなかった。祖父は、まさかそんな遠くにあるなどとは思ってもいなかった様で、後で大騒ぎになったのは余談である。


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