感想


 最初は嫌いでした。
 美形だらけとか、キャラデザインが時代劇っぽくないとか(外見だけでなく、言葉の使い方などにも配慮がない)、闘神伝以下のポリゴン(闘神伝は、できが悪い(といっても黎明期のゲームという言い訳はある)ながらも、「キャラクター」として記号化には成功していたと思うが、蒼紅は救いようがなかった)とか、最悪の部類に入るゲーム性とか、もうダメダメでした。
 ただし、ムービーのセンスはよいです。音楽もかっこよいですし。だからこそポリゴンキャラの……(以下略)
 最悪なのはナコリムの扱いでしたなぁ……。好きになった今でも、ナコリム不要論はくすぶっております。100歩譲ってリムはありにしてもナコの扱いはちょっといまいち……。
 どう考えても、20年間妹を放置していたことにしかならないのですが……聖霊になって時間感覚がくるっちゃったんですかねぇ……

 それが、半蔵の設定とか、素敵な同人誌と巡り会えたこととか、コミック版の秀逸さ、後ダメダメさへの慣れで少しずつ態度が軟化してきました。
 とにかくこのゲームは、ゲーム性の悪さと(一本取った時にゲームが中断状態になる、敵がガードすると何もできなくなる、等)、平たく悪く言えば「同人的なノリの強すぎる」部分が取っつきを悪くしております。しかし、よくよく見ればそれまでのシリーズの締めるところはきちっと締めているのがわかります。ポリゴン三部作と限れば、設定やシナリオは、ちゃんとした締めの作品です。
 それに気づいてくると、じわじわとハマってくる妙な魅力がこの作品にはあります。……適度にフィルタを掛けて良いとこだけを見るようになった、とも言いますが(笑)。
 今や、サムスピシリーズの中でも好き度の高い存在になっております。


 このゲーム、一見するとサムスピらしくないのですが、物語的には実にサムスピらしい一作だと思うようにさえなりました。
 サムライスピリッツというのは、「それぞれのキャラにそれぞれの目的があり、全てのキャラが主人公となりうる」のが物語としてみた時の特徴であり魅力だと思うのです。
(といっても、それを満たしているのは初代と斬のみのような気がしたりなんかするのですが……(笑))
 そして、その点を昇華したのが本作と考えます。
 おかげで、いくつものストーリーが交錯し、少々わかりづらくなってたりもするのですが……
 一応、基本の三人のボス(刀馬、命、朧)でストーリーの流れは別れています。九皇天昇流にまつわるエピソード、ポリサムから続くユガ編の決着となるエピソード、朧(と慈眼大師)を元凶とする災厄のエピソードの三つです。これにあと、離天京の覇権問題などが絡んでは来るのですが。
 あと、最後の隠しキャラとして現れる九皇蒼志狼エピソードは、サムスピの最後の決着を示すものになっています。蒼紅の存在と同じく、賛否両論あるとは思いますが、「時代の移り変わり」と「その中で生きる剣士の思い」を描いたものとしてはとても良いものだと思います。コミック版の描き方が特によいですねぇ。

 私が一番好きなのは、やはりというか何というか、「服部半蔵」の存在が大きい朧エピソードです。
 九皇天昇流編が新主人公である蒼志狼、ユガ編決着が覇王丸、そして、朧編は服部半蔵が主軸になっているのです。半蔵殿ファンとしてこれほど嬉しいことはありませんですよはい。
 ……いやそのこれはファンのひいき目で、朧編の主軸は、榊銃士浪達反幕府勢力だと思いますが……(笑)。

 
 とりあえず、このゲームはサムスピファンにも、そうでない方にも、お勧めは全く、これっぽっちも、できません。
 興味あるんだけど……ってな人になら、色々とお話しできるかも、というレベルです。
 その興味も、「クソゲーでしょ」ってなネガティブな見方の場合は、「はいその通りです」としか言えないので、ポジティブな興味を向けていただけると嬉しいです。

 一度、良いところに気づいたら、かなり楽しめる愉快な作品であることは確かです。
 私はゲーム性は語れませんが、気に入っている人は気に入ってるそうですし。
 そういう意味では「良い作品」であると言えると思います。


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