ゲッシュ


一 2001年 初秋 その一
「なあ、イエローって自衛隊にいたんだろ?」
 そんな不躾な質問をするのは、レッドしかいない。
 がきんちょユニットだってやりそうなものだが、案外、プライベートなことには踏み込んでこない。
 ガオの戦士としてのつきあいがレッドよりは長い所為だろう。
「……それがどうした」
 とりあえず、イエローはそれだけ言葉を返す。
「髪の色、そんなのでよかったのか?」
「今日ね、レッド、自衛隊のポスター見たのよ」
 ホワイトが補足し、それでイエローは何故レッドがそんなことを言い出したのかの訳を、大体察した。
――ったく、つまんねぇことに気づきやがって。
「……よくねーよ」
 下手にごまかすとかえってめんどくさくなるので、とりあえず正直に答える。
「じゃあ、なんでそんな頭なんだ?」
――ウラを倒してしばらく、暇だからなぁ……
 シュテンの時のウラの例もあるのだから、次のハイネスが出てくる可能性があるため油断はできないが、現在のところ世の中は平和であり、ガオレンジャーは一時の平穏を愉しんでいる。
 それは同時に、彼らが暇だということにも、なるのである。
――だが、これ以上説明するのは面倒だ。
「別に、どうでもいいだろ」
「そりゃそうだけどさ」
「俺はお前の暇つぶしにつきあう気は……」
 水しぶきが上がる、音。
――もう一人暇なのがいたっけか。
 おーまいがっ、とイエローは口の中で呟いてみた。
「それはねっ」
 ガオの泉から姿を現したもう一人の暇人、ガオの巫女テトムが目を輝かせて言った。
「あたしのためなのよ♪」
 ぴくり、とイエローが眉をつり上げる。
『テトムの?』
 レッド、ブルー、ブラック、ホワイトの四人が、同時に不審の声を上げる。
「そうよ」
 幾分誇らしげに、テトムは胸を反らした。
「どうして?」
「なんで?」
「それはねぇ……」
 一瞬、この場をこっそり立ち去ろうかとイエローは考えたが、テトムが何をどう話すかわからないと思い直し、仏頂面をしながらも、話し始めるテトムに目を向けた。

次へ
物書きの間トップへ
物書きの間トップへ(ノーフレーム)