ゲッシュ


三 2001年 初秋 その二
「なるほど、200年前に会った大自然の巫女とガイジンの忍との縁ねぇ」
 ふむふむ、とレッドが頷く。
「うん。とっても頼りになったの。
 それに、いい子達だったわ」
 みんなと同じでね、とテトムは微笑む。
 優しい透明な笑顔に、ガオレンジャー達は言葉を失った。
 テトムは、オルグと戦う戦士を導くためだけに、たった一人で長い時間を生きてきた巫女なのだ。普段は忘れているそれを五人は改めて意識した。
 それでも、テトムの微笑みはその辛いこともあるはずの事実を感じさせない。だからこそ、五人は沈黙してしまったのだ。
「?」
「な、なぁ、テトム」
 きょとん、と首を傾げたテトムに、場の空気を変えようとレッドが尋ねた。
「最初はイエロー1人だったから、髪の色を変えるってのはまあ、なんとなくわかるけどさ。
 いまはもう、いいんじゃないか? 俺達だっているんだし」
「だって、似合ってるでしょ?」
「……わ、割と」
 そうかなぁ、という顔になったレッドの代わりに、ブラックが頷く。
「よかったぁ。
 イエロー、似合ってるって」
 テトムはいつもと同じ明るい笑顔をイエローに向けた。
「へっ」
 ぷい、とイエローはそっぽを向く。
「あぁ〜〜、イエロー、照れてるぅ」
 ホワイトがイエローの顔を覗き込む。
「だ、誰がっ」
「だってぇ、顔、赤いよ?」
 ぷにぷに、と、ホワイトは指でイエローの頬をつついた。
「あ、ホントだ。イエロー、真っ赤だぜ」
 ブルーも面白がってイエローの顔を覗き込んでひやかす。
「うっるせぇ、おこちゃまズの分際で!」
「おこちゃまとイエローが照れてるの関係ないでしょっ」
「こんなことで顔が赤くなる方が子供じゃないか!」
「だぁっ、うるせぇうるせぇうるせぇっ!」

「……なぁ、テトム」
 騒ぐ三人を見ながら、レッドはふと思いついて、聞いた。
「本当にイエローの髪って元に戻せないのか?」
 いつかこの戦いが終わったときにあの頭では、さすがにイエローが困るのではないかと思ったのだ。
「うん。
 何でかわかんないけど、元に戻らないみたいなの」
「ほんとに?」
「ホント♪」

 にっこり。

「嘘だ……」
「自分も、そう、思う」

「なぁに?」
「い、いや、何でもないよ。なぁ、ブラック?」
「そ、そうだなぁ、レッド」

 あはははははははは。

 乾いた笑いを上げた後、レッドとブラックはこっそり息を吐き、同時に思った。
――イエロー、あわれな奴……

 そして。
 広間の入り口で体育座りしている男が一人。
「テトム殿……俺の髪は染めてくれないのだろうか……」
 自分の前髪を引っ張ってため息をつく大神月麿一千とんで六十歳、彼の思考がどうなっているかは謎である。

次へ
物書きの間トップへ
物書きの間トップへ(ノーフレーム)